名前のない登場人物。奇妙な母娘関係を描く『母性』の感想。

湊かなえさんといえば、『告白』が真っ先に思い浮かびます。

湊かなえさんのデビュー作ですね。高校生のときに読んで松たか子さん主演の映画もしっかり見ました。不気味で怖い話だなと思ったことを覚えています。

 

今回紹介する『母性』はこれまた不気味な話。

『告白』よりももっと歪んだ人間の内面、母と娘の関係を描いているお話です。

 

物語は母、娘、先生の視点からそれぞれ描かれて進んでいきます。

 

母が自身の母親のことをとても尊敬し、愛していて、娘が産まれてからも母親からどこか独り立ちできていない。

娘のことよりも母親のことが大事で、母親と一緒にいたい。

そして、娘には自分の母親を喜ばせるような言動をとるように誘導する。

 

そんな母に育てられた娘は母から大切に育てられたとは思いつつも、祖母が自分にしてくれたような“あなたはそのままでいい”という無条件の愛を母からは感じられずに成長していきます。

 

印象に残った一行は娘の回想シーンから。

 

いや、少しくらい正しくないことをしても、世間から許される、とは考えも及ばなかったのだ。-p52『母性』湊かなえ

 

母から無条件の愛ではなく、他人からの評価を重視して育てられた娘。

同級生のお喋りをうるさくて迷惑だからと話をさえぎって「静かにしよう」と言ってしまい疎まれます。

“別にちょっとくらいいいじゃんね”ができない。

 

この一行を読んだときに私の頭によぎったのは夫でした。

夫は年の離れた兄と姉のいる三兄弟の末っ子で、甘やかされたわけではないけど、愛情は惜しみなく受けて育ったタイプ。なので、割となんでも許されると思ってギリギリを攻めるところがあります。そして、たまに相手を本気でブチ切れさせます。

 

片や四人兄弟の二番目、バランス重視で育ってきた私はどちらかといえば世間の目を気にしてしまうタイプ。小説の中の娘の気持ちがわからなくもありません。

正直、夫のような人の目を気にしない生き方はうらやましい!

 

この話、母と娘の名前が登場しないのです。他の人の名前は登場するのに。

母は娘のことを「娘は」と回想し、娘は母のことを「母は」と回想するので、名前がまったく出てこない。名前が出てこないことで母と娘が特定の誰かというよりも、どこか自分自身のことに当てはまるように感じられました。

 

この小説、2022年11月に映画化されています。

映画となると母と娘に特定の誰かが当てはまってしまうわけで(映画では母が戸田恵梨香、娘が永野芽郁)、この名前のない母と娘で進んでいく話の奇妙さの部分をどう表現していくのか。

あと、この話は、母、娘、先生の視点でとらえ方が違って物語が進んでいくため、これをどう映画にしているのかも気になります。

TSUTAYAでレンタル開始したら、借りて見たいと思います!(←映画館に行け)