高校の伝統がいつまでも残る不思議。『六番目の小夜子』の感想。

 

何千人、いや何万人もの生徒たちが過ごしてきたこの古い校舎には、中で過ごしているだけで、それはもう雰囲気いとしか言えないもの―この場所に染み付いているエネルギーとしか言いようのないものが忍び込んでくる。P43『六番目の小夜子』恩田陸

『六番目の小夜子』は恩田陸さんのデビュー作です。

テレビドラマ化もされています。

高校を舞台に繰り広げられる物語です。

内容はこんな感じ。

  • 三年ごとに『サヨコ』役が一人選ばれ、学園祭で舞台をする。
  • 新しい『サヨコ』役は前代の『サヨコ』から選ばれて舞台の台本の入った棚の鍵が送られてくる。
  • 自分が『サヨコ』であることは秘密にしておかないといけない。
  • 小説の中で描かれているのは、この伝統で六番目の『サヨコ』の年のできごと。

こんな不思議な話なのになぜかとても現実味があって読み終わるまでずっとドキドキが止まらず、次のページ次のページへと駆り立てられるように読みました。

物語の舞台の高校というのが、私の高校時代と重なったこともあるかもしれません。

私の通っていた高校も文化祭や部活、生徒会活動などが生徒だけで行われ、先輩たちから引き継いできたものが変化しながらも根底にある考え方などは変わっていない感じがありました。

高校の中だけにある独自のルール、慣習が自分のまだ生まれていない頃から生徒たちによって繰り返されてきたそれが、学校というものを形成してる。

その学校で過ごす3年間は、確かに自分が過ごしているんだけど、過去にも自分と同じようなことをした人感じた人がいるんじゃないか、とどこか感じる。

学校の中の伝統という形がないけれど確かに存在するもの。そういうものがこの小説一冊にギュッと詰められていると思いました。

選んだ一行は私の気持ちととても重なる部分があり、「まさにそう!!」と誰かに伝えたくなりました。

今では有名な恩田陸さんですが、この『六番目の小夜子』、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補に残るものの酷評され、最初はまったく売れず絶版したそうです。

こんなにおもしろいのに!!?

この小説は恩田陸さんが会社員を辞めて三週間くらいで衝動的に書いたそうです。

そのせいか私は読んでいて、まるで自分が作者自身になっているかのような感覚を感じました。

小説を書きながらどんどん物語ができあがっていくようなそんな感覚。

(小説書いたことないけど・・・汗)

今世に出回っているものは、単行本になる前に大幅に加筆を加えたとあるので、初版のときのものも読んでみたい・・・!

おもしろすぎて最後まで一気読みすることになるので、読み始めるときは後ろに予定のないときがおすすめです。